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チタンの機械的性質、用途及び説明

材質 形状 調質 引張強さ
(Mpa)
耐力(Mpa) 伸び(%) ビッカース硬さ 比重(g/cm3) 用途 説明
純チタン チタン1種 丸棒(ピーリング) 270~410 ≧165 27 130 4.51 アクセサリー,医療器,医療用インプラント,医療用部品,光センサー,航空機,産業用部品,自動車,半導体 純チタンは様々な規格によって大きく1種~4種に分類されています。 この分類は不純物成分の含有量によって決まっており、1種が一番柔らかく伸びが最大です。 一般的に容易に手に入るのは2種材料になります。 逆に最も引張強さが強いものが4種材(Gr.4)と言われています。
チタン2種 丸棒(センターレス) 340~510 ≧215 23 160
チタン3種 板材 480~620 ≧345 18 200
チタン4種 ワイヤー 550~750 ≧485 15 230
チタン64合金 ELI 丸棒(センターレス) 980 921 14 320 4.43 医療材料、人工骨、インプラント、ネジ、ファスナー、自転車ギア チタン合金の中でも比較的、切削性・溶接性に優れ、鍛造品や板状など加工性に富んだ性質を持っています。また高温下でも安定した強度を保つため、医療分野、航空機の開発など、様々な業界で使用されております。 
Gr.5 丸棒(センターレス) 980 921 14 320 4.43
Bio-Titan LEX ワイヤー 4.5 カテーテル、高級ゴルフクラブヘッド、サスペンション、
エロージョンシールド(橋梁など)、眼鏡フレーム
一流のアスリートの筋肉は強くたくましく、優れたバネを持つと言われています。 Bio-Titan Lexはアスリートの筋肉の様に優れたバネ性、強度をバランスよく有する事を意識して開発された新しい高強度・超弾性チタン合金です。 
Z ワイヤー
医療材料、人工骨、インプラント、ネジ、ファスナー、アクセサリー等、
眼鏡フレーム
Bio-Titan Zは、安全な骨インプラント用チタン合金開発の中で誕生しました。 現在 整形外科で使われている骨インプラント用チタン合金の弾性率は110 GPaで、人間の骨 の弾性率30 GPaより著しく大きいことが問題になり、その解決のために最近開発された のが低弾性率チタン合金です。 Bio-Titan Zはその一種で人間の骨に近い40 GPa級の 弾性率をもちます。 弾性率が小さくなるほどバネ性(形状回復率)が良くなります。
Hybrid Titan Hybrid Titan ワイヤー 895 825 10 65 4.5 レーシング用サスペンション、眼鏡フレーム Hybrid Titan

Hybrid-Titanは、純チタンの約3倍の強度というチタン合金としては、最高クラスの強度を有する材料です。 一般的なβチタンより強度があることから、高度な部品開発、自由なデザインが可能です。

β合金 β153合金 ワイヤー 705-945 690-835 12以上 25 4.8 自転車ギア、ネジ、釣り具、
ゴルフクラブヘッド、
眼鏡フレーム
純チタンを上回る強度を持ちつつ、優れた冷間加工性を持つチタン合金シリーズ。 焼鈍無しで80%以上の冷間加工も可能です。 また、時効処理にて更なる高強度化も可能です。
用途に応じて2種類のβチタン合金をラインナップしております。 
β153(15V-3Cr-3Al-3Sn)合金 板材
β422(4Al-22V)合金 板材 バルブ、スプリングリテーナ、
ボルト、眼鏡フレーム
β422(4Al-22V)合金 ワイヤー
機械的性質

1.比強度が高い
チタンの比重は鋼・ステンレス鋼の約60%で、構造材料として使用する場合、これら金属材料の半分の重量ですむことになります。
このため非強度は(引張強さ/比重)が高く、特にチタン合金の非強度は500℃まで実用金属中最高の値を示します。

2.耐力/引張強さの比率が高い
チタンは引張強度に対して耐力値が高く、特にチタン合金ではその比率が90%以上という高い値を示します。

3.疲労強度がすぐれている
引張強さに対して疲労強度が極めて高く、疲労比(疲労強度/引張強さ)は0.5~0.6を示します。
(鋼の疲労比は0.2~0.3)

4.衝撃性質がすぐれている
工業用チタンは常温よりむしろ低温で靭性を有しております。また、チタン合金も鋼であらわれるような低温における急激な脆化現象を示しません。

物理的性質

1.溶融点は1,668℃で高い(鉄よりやや上)。

2.比重は4.51で軽い(鉄の約60%、アルミニウムの約1.7倍)。

3.熱誇張係数は8.4×10-6/℃で小さい (18-8ステンレス鋼の約半分、アルミニウムの1/3)。

4.熱伝導率は0.041cal/㎝2/sec/℃/㎝で小さい (18-8ステンレス鋼とほぼ同じ)。

5.電気抵抗は55μΩ-㎝で大きい (18-8ステンレス鋼以外の純金属に比べて大きい)。

6.透磁率は1.0001で非磁性体である。

7.結晶構造は変態点(885℃)以下では稠密六方格子で、変態点以上では体心立方格子である。

8.縦弾性係数は10,850kgf/m㎡で小さい。(鉄の約半分、アルミニウムの約1.5倍)。

他金属材料との物性比較
項目 原子番号 原子量 比重 溶解点(℃) 熱膨張係数 比熱
( /℃) (cal/gr/℃)
チタン 22 47.9 4.51 1,668 8.4×10-6 0.124
26 55.85 7.9 1,530 12×10-6 0.11
18-8ステンレス鋼 7.9 1,400~ 17×10-6 0.12
(SUS304) 1,420
アルミニウム 13 26.97 2.7 660 23×10-6 0.21
アルミニウム合金 2.8 476~ 23×10-6 0.23
638
マグネシウム 12 24.32 1.7 650 25×10-6 0.24
ニッケル 28 58.96 8.9 1,453 15×10-6 0.11
ハステロイ C 8.9 1,305 11.3×10-6 0.092
29 63.57 8.9 1,083 17×10-6 0.092
耐食性

1.チタンは、表面の安定な酸化皮膜(不動態被膜0)の存在によって、優れた耐食性を発揮します。

2.チタンの耐食性は、溶接、加工、熱処理などの材料履歴により劣化しません。

3.塩酸や硫酸などの非酸化性酸に対しては、濃度・温度条件によっては腐食されますので注意が必要です。

4.苛性ソーダなどのアルカリに対しては、極端な高温・高濃度条件を除いて、十分な耐食性を示します。

5.海水に対する耐食性は、白金に匹敵します。

6.酸素、水素、窒素ガスとの親和力が比較的大きいため、条件(温度や圧力など)によっては使用上注意を要します。

JIS規格質別用語- (JISH0001) ※日本工業標準調査会ご参照

基本記号 定義 意味
F 製造のままのもの 加工硬化又は熱処理について特別の調整をしない製造工程から得られるもの。(特に調質の指定なく製造された状態を示す。押出しのまま、鋳放しのままで調質をうけない材料がこれにあたる。)
O 焼なましにより最も軟らかい状態となったもの 焼なましにより完全に再結晶した状態を示す。熱処理合金の場合は、焼なまし温度より緩やかな冷却を行い、焼入れの効果を完全に防止することが必要である。鋳物では、伸びの増加又は寸法安定化のために施される。
H 加工硬化したもの 適度の軟らかさにするための追加熱処理の有無にかかわらず、加工硬化によって強さを増加したもの。
W 溶体化処理したもの 溶体化処理後、常温で自然時効する合金だけに適用する不安定な質別。 
T 熱処理によってF・O・H以外の安定な質別にしたもの  安定な質別にするため、追加加工硬化の有無にかかわらず、熱処理をしたもの。
HX細分記号 意味
H112 展伸材においては積極的な加工硬化を加えずに、製造されたままの状態で機械的性質の保証されたものを示す。 
H1 加工硬化だけのもの:
所定の機械的性質を得るために追加熱処理を行わずに加工硬化だけしたもの。
H2 加工硬化後適度に軟化熱処理したもの:
所定の値以上に加工硬化した後に適度の熱処理によって所定の強さまで低下したもの。常温で時効軟化する合金については、この質別はH3質別とほぼ同等の強さをもつ。そのほかの合金については、この質別は、H1質別とほぼ同等の強さもつが、伸びは幾分高い値を示す。
H3 加工硬化後安定化処理したもの:
加工硬化した製品を低温加熱によって安定化処理したもの。その結果、強さは幾分低下し、伸びは増加する。 この安定化処理は、常温で徐々に時効軟化するマグネシウムを含む合金にだけ適用する。
H4 加工硬化後塗装したもの:
加工硬化した製品が塗装の加熱によって部分やきなましされたもの。 
HXY細分記号 意味 参考
HXY HX1 引張強さがOとHX2の中間のもの。 1/8硬質
HX2 引張強さがOとHX4の中間のもの。  1/4硬質
HX3 引張強さがHX2とHX4の中間のもの。 3/8硬質
HX4 引張強さがOとHX8の中間のもの。 1/2硬質
HX5 引張強さがHX4とHX6の中間のもの。 5/8硬質
HX6 引張強さがHX4とHX8の中間のもの。  3/4硬質
HX7 引張強さがHX6とHX8の中間のもの。 7/8硬質 
HX8 通常の加工で得られる最大引張強さのもの。引張り強さの最小規格値は原則としてその合金の焼きなまし質別の引張り強さの最小規格値を基準に表(4)によって決定される。 硬 質
HX9 引張強さの最小規格値がHX8より10N/平方mm以上超えるもの。 特硬質
意味
T3 溶体化処理後冷間加工を行い,さらに自然時効させたもの。
(溶体化処理後強さを増加させるため冷間加工を行い,さらに十分に安定な強度まで自然時効させたもの。)
T351、T3511 溶体化処理後冷間加工を行い,残留応力を除去し,さらに自然時効させたもの。
(溶体化処理後強さを増加させるため冷間加工を行い,永久ひずみを与える引張加工によって残留応力を除去した後,
さらに自然時効したもの。)
T361 T3の断面減少率を6%としたもの。
T4 溶体化処理後,自然時効させたもの。
(溶体化処理後冷間加工を行わず,十分に安定な状態まで自然時効させたもの。
したがって,矯正してもその冷間加工の効果が小さいもの。)
T42 T4の処理を使用者が行ったもの。
T45、T4511 溶体化処理後残留応力を除去し,さらに自然時効させたもの。
(溶体化処理後,永久ひずみを与える引張加工によって残留応力を除去し,さらに自然時効させたもの。)
T5 高温加工から冷却後人工時効硬化処理したもの。
(鋳物または押出材のように高温の製造工程から冷却後積極的に冷間加工を行わず,人工時効硬化処理したもの。
したがって,矯正してもその冷間加工の硬化が小さいもの。)
T5E T5処理の人工時効の時間を短く,温度を低くして亜時効処理したもの。
曲げ加工をするもので,T1では強度不足のものに適用する。(当事者間の協定による調質)
T6 溶体化処理後人工時効硬化処理したもの。
(溶体化処理後積極的に冷間加工を行わず,人工時効硬化処理したもの。
したがって,矯正してもその冷間加工の効果が小さいもの。)
T62 T6の処理を使用者が行ったもの。
T65、T6511 溶体化処理後残留応力を除去し,さらに人工時効硬化処理したもの。
(溶体化処理後,永久ひずみを与える引張加工によって残留応力を除去し,さらに人工時効硬化処理したもの。)
T7 溶体化処理後安定化処理したもの。
(溶体化処理後特別な性質に調整するため,最大強さを得る人工時効硬化処理条件を超えて過剰時効処理したもの。)
T73 溶体化処理後過時効処理したもの。(溶体化処理後耐応力腐食割れ性を最大にするため過時効処理したもの。) 
T74 溶体化処理後過時効処理したもの。
(溶体化処理後耐応力腐食割れ性を調整するためT73とT76の中間の過時効処理したもの。)
T76 溶体化処理後過時効処理したもの。
(溶体化処理後耐はく離腐食性をよくするために過時効処理したもの
T8 溶体化処理後冷間加工を行い,さらに人工時効硬化処理したもの。
(溶体化処理後強さを増加させるため冷間加工を行い,さらに人工時効硬化処理したもの。)
T83 T8の断面減少率をほぼ3%としたもの。 
T851 溶体化処理後冷間加工を行い,残留応力を除去し,さらに人工時効硬化処理したもの。
(溶体化処理後,永久ひずみを与える引張加工によって残留応力を除去し,さらに人工時効硬化処理したもの。)
T861 T361を人工時効硬化処理したもの。 
T9 溶体化処理後人工時効硬化処理を行い,さらに冷間加工したもの。
(溶体化処理後人工時効硬化処理を行い,強さを増加させるため,さらに冷間加工したもの。)

※ 日本工業標準調査会ご参照

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